プロフィール

ひと夏のチャリんこ家出物語「第1話 腐りきった高校生活」

 

高3の夏。

それはジメジメした日のこと。

目を開けられないぐらいの土砂降りだった。

 

僕が実家を出て自分の力で生きていこうと決めたのは・・・

 

この記事はプロフィール第3章で公開した家出した時のストーリーをリアルに再現したものです。

【3章】恋愛に部活に青春!なんて幻想は一切ない!ガタガタと崩れる人生の歯車

 

腐りきっていた高校生活

 

僕が家出をしたのは高校三年の夏休み前の出来事だった。

 

まだ僕は18歳にもなっていないそこら辺にいる目つきの悪いいわゆるクソガキだった。

 

高校は地元にあるほぼ男子校と言えるような工業高校。

3年間、女子と同じクラスになったことはなかった。

おかげで卒業する頃には女子との話し方がわからなくなっていた・・・

 

学校にまともに通ったのは1年の2学期まで。

その頃は入学したてというのとバドミントン部に入っていたということもあって、楽しく学校に通っていた。

 

しかし、バドミントン部でのとある出来事がきっかけで僕の人間関係がガタガタと壊れ始めた。

その結果、高校を卒業する頃にはクラスの中で1人だけ浮いている嫌われ者になっていた。

 

基本的に僕に話しかけてくるやつは誰もいなかった。

僕から話しかけることもなかったが・・・

 

授業中といえばいつも適当なマンガを読むか体育着をキレイにたたんで枕にして寝るかのどっちかだった。

入学直後のテストでは上位2番の成績だったのに、卒業する頃には下から2番だった。

順位が断然下がったことより僕よりも下がいたことに驚愕した。

 

そんな僕でも学校の外に友達がいた。

今思うと少しでも人付き合いがあったのは僕にとって救いだったかもしれない。

 

友達とは他の高校に通っていた麻雀仲間と中学校の同級生だ。

 

特に麻雀仲間とはよく遊んだ。

学校をサボっては麻雀をした。

2時限目に出席して休み時間に早弁して3時限目終わったら帰り、メンツを集めて麻雀をした。

 

類は友を呼ぶとはよく言ったもんだ。

麻雀好きなやつらは学校をサボってまでやる人間ばかりだった。

 

でも、3年に上がってからは状況が一変した。

全く将来のことを考えていなかった僕には苦痛の毎日になった。

 

麻雀仲間の多くが進学校だった。

大学受験で忙しくなってしまったので麻雀をやらなくなった。

週6〜7ぐらいでやっていたのに、急に2週間に1回とかになった。

 

麻雀中毒になっていたので、毎日が苦痛だった。

 

結果的に大学受験した麻雀仲間の1人は志望校を落ちて3流の大学に進学した。

周りが将来を考える中、僕は全く何も考えていなかった。

 

就職する気はさらさらない。

フリーターになるのも嫌だったから、「勉強しないで入れる大学ってないかなー」なんていう甘ったれた考えをもっていた。

 

だから、秋になっても何も動こうとしなかった。

 

 

離れて住んでいる兄と殴り合いになった

学校に行かなくなりはじめたのは高校2年の夏ぐらいからだった。

それと同時にタバコも吸いはじめた。

 

全くやる気をなくしてしまっていた。

 

朝起きると頭がボーッとする日々が続いていた。

朝といっても9時、10時は当たり前になっていた。

 

目を覚ましても身体に力が入らない。

手足だけじゃなく、胸にも尻にもヘソにも・・・

身体中のいたるところに力が入らない。

 

そのとき、たまたまニュースで統合失調症という言葉を知った。

「もしかしたら、俺は統合失調症になってしまったんじゃないか?」

と病気のことをよくもわからず本気で思い込んでいた。

 

毎日、朝起きるとやる気のない日々が続いていた。

しかし、麻雀をやっている時だけは救われた気持ちになっていた。

身体中に力が入るからだ。

 

グルグルと激しく動く麻雀パイを追う目、相手の動きや表情を睨みつける視線、ついついギュッと握ってしまう手、上がりを想像しながら回転し続ける思考回路、上がれるか上がれないかの正念場に感じる心臓の鼓動・・・

 

まさに麻雀は僕に生きる活力を与えてくれた。

 

でも、それ以外の時は全くやる気がなかった。

バイトは結婚式場でたまにやったが、いつも嫌悪感にまみれていた。

 

家族は理解していなかったと思う。

 

僕に活力を与えてくれていたのが麻雀だけだったなんて・・・

 

今思えば、スポーツを辞めてからかもしれない。

辞めた途端、身体中からエネルギーがなくなっていった気がした。

 

バドミントン部を辞めて1週間後に体重を測ってみた。

8キロも体重が落ちていた。

この出来事は空いた口がふさがらないほどビックリしたことを覚えている。

 

その時はたまたま体重を毎日測っていた。

コップに入ったジュースをストローで飲むときのような勢いで日に日に体重が落ちていったことが信じられなかった。

 

体型はほとんど変わらない。

変わったのは体重計の数字だけ。

 

落ちたのは筋肉なんだろうなと思った。

飛ぶ鳥落とす勢いで落ちていくもんなんだなー。

 

毎日が暇になった。

だからバドミントン部を辞めてから半年後、陸上部に入った。

動機は暇だったからというのと、かるーく体を動かしたいという思いがあったからだ。

 

当時は日常的に体を動かすのは部活に入るしかないという思考しか働かなかった。

 

陸上部に入ってからすぐに何の競技をやるのか決めなければならない。

これといってやりたい競技なんかなかった。

「軽い運動ができればいいやー」ぐらいの気持ちで入っていたから、めちゃくちゃ疲れるのだけは嫌だと思っていた。

陸上部に入ってる人にどの競技だと練習が楽か聞いてみた。

アドバイスをもらって選んだ競技は「やり投げ」だった。

 

練習していたときに「やり投げは楽な競技だなー^^」なんて思っていた。

しかし、初めて陸上の大会に出た時、その考えが非常識だったことに気づかされた。

 

やり投げトップクラスの人間が競技している姿勢があまりにも眩しく見えた。

 

実力が違いすぎる。

ただ僕がいた高校のやり投げが弱いだけだった。

 

それから数ヶ月後、

大きな大会中に泊まっていた宿舎でちょっとした問題を起こして「退部」にさせられた。

わずか半年で。

 

体を動かす程度でよかったのと、やる気もなく適当に練習していたし、しょっちゅうサボっていたのもあって悔しい思いは一滴たりともなかった。

 

そして、だんだんと生活は乱れ、身体からエネルギーがなくなる感覚がわかる。

まるで牛乳がいっぱいに入ったコップを思わず倒してしまった後のコップのような状態だ。

牛乳がエネルギー、コップは俺の身体だ。

戻したコップには水滴状の牛乳しかついていない。

 

僕のエネルギーは残った水滴分ぐらいしかないようだった。

 

 

この頃の家の中は、何十種類もあるいろんな絵の具をバケツの中に少し水を入れてぐちゃぐちゃにして混ぜ切れていないような、まるで「カオス」だった。

 

不登校になり気味な僕に当然のように家族からは学校に行くようにしつこく言われる。

 

当時は母親と二人暮らしだった。

母親は職場である程度の職位についていた。

 

朝、なかなか起きれない僕を何度も起こしに来た。

いやいや起きることもあったが、起きなかったこともあった。

むしろ起きないことがほとんどだった。

 

 

ある日、起きない僕の近くで、母親がグスグスと泣いていたことがあった。

乱れに乱れた息子を見て、心底辛くなったのだろう。

早くに旦那を亡くし、女手一つで頑張って育てて来た息子の人生が荒れてきているのだから。

 

悲しくなって当然だと思う。

 

その頃に母方の祖父が家にやって来た。

 

はじめは遊びに来たのかと思ったら違った。

話を聞いているとどうやら僕を諭しに来たようだ。

 

「なるほど、母さんの差し金か」

 

そう思いつつ話を聞いていた。

が、大した話は特になく、いいたかったことは一つだけ。

 

「頑張って学校に行けよ」

ということだけだった。

 

ただ、母さんと違う点が一つだけあった。

餞別に「1万円」をくれた。

 

これで頑張れよということだ。

 

お金で僕を動かそうという行動に出た。

「わかった」といってお金はもらったが、そんなことで僕の生活は全く変わらなかった。

 

数日後、また祖父がやって来て言った。

「この間、1万円やったべ!」

 

僕は祖父をガン無視して相手にしなかった。

 

 

またもや刺客が来た。

 

僕には離れて生活している兄がいる。

兄さんが家に住み込んで学校に送って行くということになった。

 

何日かは送ってもらって学校に通った。

でも、そんなのは続かない。

そもそも兄さんも真面目に学校に行ってなかったのもある。

僕は兄さんに対して、「なに真面目に学校行かそうと思ってんの?」と軽くイライラしていた。

 

兄さんは祖父と同じでパワハラ体質だった。

兄さんが送ってくれるといっても学校に行かない時があった。

 

ある時、母さんが夕食をテーブルに運んでいる時、兄さんは俺に少しイラだちながら学校に通うように説得してきた。

 

当然俺は受け入れなかった。

パワハラはエスカレートした。

 

立ち上がるなり、いきなり僕の左の顔面を握りこぶしを作った利き腕で殴りかかってきた。

 

「っ!!!!」

 

視界がぐるりと回り、体がヨタッとして少しだけ意識がもうろうとした。

一瞬、何が起こったか全くわからなかった。

 

直後、意識がもどりすぐに気づいた。

「殴られたっ!!??」

 

「なんだ、こらーーーー!!」

 

すぐさま僕は激怒して殴りかかった。

小学生の頃は完全に力負けしていたが、高校生にもなれば力もあるし、頭も使える。

 

夕飯の準備が進められていたリビングは荒れ果てた戦場と化した。

 

 

第2話へと続く・・・

 

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